特集

小さな小学校の写真展② 〜雲仙BASEとしてスタート〜

2020年3月、雲仙小学校が133年の歴史に幕を閉じました。

ウェブマガジン「つむぐつなぐうんぜん」は、この小学校の最後を記録に残したいという想いから始まりました。

閉校から3年が過ぎ、旧雲仙小学校は交流スペースとして利活用が始まっています。ウェブマガジンの運営者でもある私はこの小学校で縁あって3度の写真展を開く機会をいただきました。そのどれもが想いの詰まった写真展になりました。


2,「災害と交流スペースとしての再スタート」

【写真展をお願いしたいです】

県央を中心に仕事を始めてから、以前より地元のことを知る機会が減ったことは否めない。でも、以前仕事で担当していた島原半島には今でも大好きな人がたくさんいて、時々会いに行くことにしている。

2021年7月中旬。

このウェブマガジンでも紹介した荒木美智子さんに会いに行った時のこと。(特集「雲仙への思い③」

休憩所で温泉卵を販売している荒木さんの忙しい合間をぬって、近況を語り合っていたら、他県から訪れたお客様をアテンドする雲仙温泉観光協会(当時)の森優子さんから声をかけられた。

森さんとはフリーランスとして駆け出しのころに、サンカクフェスや雲仙仁田峠プレミアムナイトの動画の仕事で関わらせてもらって以来だった。

※2019年当時のものです

「今度、雲仙小学校が交流拠点として生まれ変わります。そのオープニングイベントで、閉校式の時みたいな写真展をお願いしたいです」

森さんは雲仙小学校の卒業生で、雲仙温泉の観光をPRする仕事を担っていた。彼女は閉校式の時の写真展をとても気に入ってくれていたそうで、こんなことを言ってもらえて、嬉しかったのを覚えている。ただ、今回は教室が空いていないということで理科室になるとのこと。

森さんは写真に写った子供たちの保護者へ再度の展示の許可をとってくれた。森さんの交流拠点へ対する思いの強さはSNS等で感じていたので、彼女の思いに少しでも近づきたいと、事前に理科室の見学に行きたいとお願いした。

しかし、イベントを1週間前に控えた8月初旬の見学の日、森さんは新型コロナのワクチンによる発熱で参加できず、会えなかった。

結局、雲仙小学校の交流スペース「雲仙BASE」としての再スタートは新型コロナの感染拡大で延期となった。

8月のお盆。この年は本当に信じられない量の雨が降ったのが忘れられない。仕事も雨の影響を受けて大変だった。

そして仕事の合間にテレビで見た「雲仙温泉で土砂崩れ」の信じられないニュース。嫌な予感がして、荒木さんに連絡をすると返ってきたのは「森家のみんなと連絡がつかない」だった。

【瓦礫が集まった雲仙小学校】

10月はじめ。私は雲仙小学校にいた。

雲仙小学校のグラウンドには災害に巻き込まれた森さんの家周辺の土砂が集められていた。森さんの妹さんがまだ見つかっていない、森さんの大切なものを探していて、私はそれを見つけるため、半日だけボランティアに参加した。

閉校を前に、子どもたちが遊んでいた、運動会の話をしてくれたあの小学校とは思えないほどの光景に悲しくなったとともに、雲仙温泉から大事な人たちを奪っていった自然の猛威に愕然とした。

10月はまだ暑い。少し湿気を含んだ土砂は半日とはいえ、私の体力を奪うのに十分だった。

重機を使っても鍬を使っても出てくるのは土砂。重たい。合間合間に少しだけ思い出の詰まったものが出てくるような感じで途方もなかった。ちっとも力になれなかった。汗を拭いながら、土をかき分けながら、妹さんが自分の友人や姉である森さんの仕事仲間の力を借りて懸命に家族のかけらを探している姿を目に焼き付けようと思った。

この時、延期になっていたオープニングイベントが開催されることを、妹さんと大切なものの捜索を続けていた方から聞いて、「写真展を」を声をかけてもらった。

【「雲仙BASE」の誕生】

10月24日。交流スペース「雲仙BASE」としてのスタートの日。

小学校の2階のはじっこ、理科室には1年8ヶ月ぶりに最後の在校生たちの写真が並んだ。

写真展には、中学に入って10センチ身長が伸び、すっかり顔つきも大人になった卒業生や思春期に突入した元在校生、最後の校長となった本村先生、そして保護者の皆さんが駆けつけてくれた。再び、学び舎で会える機会を与えてくれた森さんに感謝でいっぱいだった。

イベントは地域の人たちや観光客、企業が集う場所としての始まりを知らせるほか、森さんの思いを受け繋いでいく、復興への狼煙のような、そんな強い気持ちの詰まったイベントだったと思う。学校も閉校式や卒業式以来のたくさんの人出だったのではないだろうか。

だけど、この場所の再スタートを一番望んでいた森さんの姿はない。

学校という機能は無くなってしまったけど、卒業生も地域の人も大好きだった場所が、このように人の集まる場所になったことを、森さんもきっと天国で喜んでいたと信じたい。

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交流スペース「雲仙BASE」は週末を中心にどなたでも遊びに行くことができます。イベントも開催していますので、スケジュールを確認して遊びにいかれてみてください。

詳しくは 雲仙BASEのサイトまで こちら