暮らす人びと

馬とともに生きる ペガサスライディングパーク 関幸親さん

かつて雲仙・仁田峠に馬がいた事を覚えている人はいるだろうか。

もう30年以上前の話。

我が家は農業をしていたので、家族でどこかへ行った記憶が少ない。そんななか、数少ない家族旅行の想い出のひとつに、「仁田峠で馬に乗ったこと」がある。

小さい妹と「ちびまるこちゃん」のお母さんのような髪型の母と3人で。

当時は仁田峠の駐車場からロープウェイの駅まで観光客を馬が乗せて運んでいた。昔のアルバムをめくると白馬に乗った私たち3人が少し照れくさそうにしている写真が残っている。

前置きが長くなったが、その話を国見町で乗馬クラブとレストランを経営する「ペガサスライディングパーク」の関幸親さんに話したら、「僕は雲仙で馬をひいていたよ」と話してくれた。

もしかしたら、あの日私たちが乗っていた白馬をひいていたのは関さんだったかもしれない。

関さんとの出会いは、雲仙と馬の関係を取材した8年ほど前のこと。

島原半島は実は馬と関係がとても深い。島原では子馬のセリ「ホロンコ市」が20年ほど前まで行われていた。雲仙でも仁田峠やゴルフ場では放牧され、戦時中は多くの軍用馬が雲仙から遠い戦地へ送られたという。仁田峠から大野木場方面に登山道を少し下ったところには馬の水飲み場が残されていて、今も当時の名残を見ることができる。(草が生い茂った登山道なので、もし実際に行く際はご注意を)

関さんの先祖は江戸時代から馬を育てていた。雲仙では戦後、温泉街でも多くの人が馬を飼っていて、観光客を乗せたり、結婚式の馬車を引いたりして生活の一部だったそうだ。関さんは雲仙と馬の関係を今に伝えるかのように、今も馬とともに生きている。

ペガサスライディングパークでは、初めてでも気軽に乗馬が楽しめる。4頭いる馬たちの性格を把握した関さんが訪れた人に合った馬を選んで乗せてくれる。

コロナ禍、遠出がかなわなかった南島原市の小学校が修学旅行で関さんのクラブを訪れたそうで、なかなか普段は触れ合うことのできない馬に子どもたちは大喜びだったそうだ。先生たちも近くにこんな体験ができる場所があったとは…と乗馬を楽しんでいたと関さんは嬉しそうに話してくれた。

「人馬一体」。乗馬の醍醐味は、馬とともに心を通わせて一緒に前に進むことかなと私は思う。(最初は関さんがついてくれるので、関さんについて行く感じ笑)

関さんが引く馬に乗っていると、自動車や自転車とは違う感覚が新鮮で馬が愛おしく思えてくる。降りるときは馬のたてがみをポンポンとなでながら「ありがとう」と自然と出てきた。

30年以上前、母と妹と乗った雲仙での乗馬体験。関さんや馬と私をつなげてくれた大切な想い出になった。

ペガサスライディングパーク

  • 住所:雲仙市国見町多比良戊1385-1 
  • 電話:0957-78-5407 
  • 営業時間:10時〜20時
  • 定休日:不定休
  • 乗馬体験:場内2周 1100円〜