2020年3月、雲仙小学校が133年の歴史に幕を閉じました。
ウェブマガジン「つむぐつなぐうんぜん」は、この小学校の最後を記録に残したいという想いから始まりました。
閉校から2年半が過ぎ、旧雲仙小学校は交流スペースとして利活用が始まっています。ウェブマガジンの運営者でもある私はこの小学校で縁あって3度の写真展を開く機会をいただきました。そのどれもが想いの詰まった写真展になりました。
1,「さようなら雲仙小学校」
2019年、10月はじめ。
「明日、雲仙小の最後の運動会がある。取材して発信してやってください」
と、雲仙小学校出身の友人から連絡があった。
しかし、運動会の前日。しかも観光地にある小学校という土地柄、金曜日に運動会が行われるため、平日の予定が決まっていた私は、「うん。わかった」と答えることができなかった。
それから2ヶ月。雲仙小学校最後の校長先生となった本村校長先生や保護者のみなさん、地域のみなさんに「小学校の閉校」について話を聞く上で、子どもたちの日常を記録に残して発信できないか考えるようになった。
雲仙市では少子化の影響で小学校の閉校が続いた時期がある。
雲仙小学校も「閉校して子どもたちをもっと児童の多い小学校で学ばせるか」、「地域の活性化のために小学校を残すか」長く議論が繰り返されたそうだ。小学校は地域の人たちや保護者の皆さんの母校でもある。きっと閉校という決断は、子どもたちの未来、地域の未来、現実などを踏まえた苦渋のものだっただろう。
そして、きっとこれから別の地域でもこのような議論は増えていく…そんな気持ちになった。
2019年12月に行われたフォトシューティングでは、校舎の雰囲気、子どもたちの授業の様子、給食、昼休みの図書室、掃除、下校まで密着した。
雲仙小学校最後の在校生は3年生以上の11人。
限られた時間のなかだったが、子どもたちが学校でどんな生活をしているのか、どんな子たちなのか少しだけ垣間見ることができた。特に印象的だったのは子どもたちも先生たちも笑顔がいっぱいで、のびのびと学校生活を楽しんでいる様子を見られたことだ。
「学校で1番好きな場所は理科室。面白いものがいっぱいある。2番目は図書室。3番目は教室」。
「6年間の1番の思い出はこの間の運動会。応援リーダーを頑張った」。
「みんな素直で明るく頑張り屋さん。この学校で勉強したということを誇りにしてほしい」
「噴火災害の時もこの学校で、閉校の時にまた着任するとは…教員人生の3分の1を過ごした場所」
先生や子供たち、それぞれにそれぞれの雲仙小学校への思いを聞くことができた。
校長先生は「雲仙小学校は教育の原点がある場所」だと話していた。
先生と子どもたち1人ひとりとの距離の近さ、地域のみなさんとの関わり・・・私は卒業生ではないが、短い時間でも校長先生が話した「教育の原点」を体感することができたように思う。こんな小学校に通ってみたかったなと思った。それとともに、この場所から子どもたちの笑い声が聞こえなくなることに寂しさを感じた。
翌2020年2月。閉校式にあわせ、12月に撮影した写真を卒業生にも見てもらいたいと、先生たちや保護者の皆さんに了承を得て少しだけ展示を行った。
場所は、以前中学校があった頃に利用されていた2階の教室。生徒たちが使っていた机や窓際、後ろの掲示板などに60点近くを展示した。
翌日、多くの卒業生が参加して盛大に行われた閉校式。当日は仕事で参加ができなかったが、写真展の様子を新聞に取り上げてもらい、見に来てくれた人がいてよかったと安堵した。
片付けで学校を訪れたとき、先生たちから「片付けなくてもいいですよ。なんならゆっくり片付けてください(笑)」と嬉しい声をかけていただいた。とても嬉しかった。
あれから約3年。当時6年生だった子どもたちは高校受験を迎える。最後の在校生となった11人は今新しい学校でどんな成長をしているんだろう。
友人のメールを発端に、私の想いだけで記録に残したいと始まったウェブマガジンの原点は、雲仙小学校にあると今でも思う。