特集

雲仙温泉への思い 地域のつながりをもう一度

2021年8月。長崎県はお盆前後を長雨が襲いました。特に雲仙岳では降り始めからの雨量が1300ミリ近くと、年間の総雨量の4割を記録しました。雲仙温泉街では複数の土砂崩れが発生し、長年雲仙温泉の観光に尽力してこられたご家族3人の尊い命が奪われ、大きな悲しみが広がりました。また、観光地である雲仙地獄や商店街近くにも土砂が流れ、経済にも大きな影響がでました。

「つむぐつなぐうんぜん」では、雲仙温泉街の3人の方にインタビューをし、雲仙温泉の今の思いを伝えたいと思います。

第1回は雲仙市観光物産課の村上輝晃さんです。


【地域のつながりをもう一度  雲仙市観光物産課 村上輝晃さん】

村上輝晃さんは8月の豪雨時、11日間、地元の消防団員として、市の職員として被災現場へ捜索へ向かった。住み慣れた地元が災害に遭い、どう思ったか聞きたくなり、市役所にお邪魔した。

村上さんと私は、去年閉校した雲仙小学校で1日だけの写真展を開いたときに、最後の卒業生の保護者としてとてもお世話になった人だった。

久しぶりに会った村上さんは、少し黒く日焼けしているように見えた。私はどちらかというとこのような事態に胸を痛めている雲仙温泉街の皆さんを見るのが少しつらく、「なんて言葉をかけていいかわからない」とあいさつのあとつぶやいたら、

「なかなかね…。人のできることって限られるとね…。失ったものは大きかけどね」

とため息をつくように言葉を発してくれた。

「コロナの影響で進めていたことが滞っていた時期に、このような災害があって、ちょっと後ろ向きになってしまうけど、その分逆にがんばらんばかなって思う。今はどうしても災害のイメージが強いので、住みやすい街にしたいとも思う」

村上さんは今回の災害で再発見することもあったという。

それが避難所での「住民のやりとり」。相当数の人が避難し、みんなつらい時間を過ごしているかと思いきやみんながしゃべってにぎやかなシーンも見られたそう。お互いに顔を知っているからか、避難しているけど楽しそうに見えた。それが雲仙のよさだなと思ったそうだ。

しかし、村上さんは最近はそのような地域のつながりを持つ場が少なくなっていることも感じていた。だからもう一度、避難ではなくてもみんなが集まる場所の必要性を感じたそうだ。

「それはおそらく観光にもつながるかなと思ってる。作り上げられたものとか、自然とかを見るっていうのも1つの観光ではあるけど、雲仙を訪れたお客さんに満足してもらうためには、元気な地域の人との関わりも必要だと思う」

かつて、雲仙では地域の人が集まって、いろいろな交流が行われていた。観光関係の仕事をする人が多いことから、平日に行われる雲仙小学校での運動会には、子どもたちや保護者以外にも、地域の人、旅館ホテルで働く人、環境省の職員など地元総出で汗を流したそうだ。村上さんはそんな地域のつながりを作る催しを検討していきたいと話す。

雲仙市では、国や県などと協力しながら、復旧・日常に戻るために話し合いが進められている。これから以前より魅力ある観光地として進化していくことが期待される。村上さんもその1人として、市職員として、地元・雲仙温泉の復興へ力を注ぐ。

最後に、私が「元気そうでよかったです」というと、村上さんは

「雲仙のみんなもいつまでも後ろ向きになっていられないから、どんどん雲仙温泉に来てもらいたい。そして『どうしてる?』って声かけてもらうとみんな喜ぶと思う」と笑顔で話してくれた。